BROKEN MIRRORSシリーズ
多和田有希『thegirlwhowaspluggedin』
多和田有希は、波や人間を被写体とした写真を、ハンダごてで焼き切る方法論を推し進めてきた。そこには、神経や森のマジックリアリズム的なメタファーも込められてきた。
その多和田が、この2020年、TOKYO BROKEN MIRRORSで取ったのは、初めてスキャナーに挑戦すること。そして70年代SFの奇才ジェイムズ・ティプトリー・Jr.の短編『接続された女』を補助線とすることだった。ティプトリーは、若き日にCIAに勤務し、50歳を過ぎてデビューし話題をさらったが、その正体が女流作家だと暴露されたのは10年後だった。そしてかねてよりの夫婦の約束にもとづき、病になった夫を銃殺し、自らもその銃で自殺した。
多和田は、砕け散る鏡に、乱反射し、かつスキャナーで歪められ続ける女の表象を、まるでボレロのように官能的に反復する。
2020年の始まりにふさわしい問題作の登場だ。
YUKI TAWADA
1978年、静岡県生まれ。東北大学卒業後、ロンドン芸術大学キャンバウェルカレッジ写真学科を経て東京藝術大学大学院博士課程修了。2019年より京都芸術大学、美術工芸学科で教鞭を執る。人間の精神的治癒のシステムをテーマに、写真療法のリサーチと、自らの撮影した写真のプリントを焼く、削るなどの独自のプロセスによって作品を制作する。主な個展に「悪魔祓い、系統樹、神経の森」(G/P gallery、東京、2018)「Burnt Photographs」(TARO NASU、東京、2012)、主なグループ展に「5×3」(Kunstraum Düsseldorf、デュッセルドルフ、2015)、「カミナリとアート 光 / 電気 / 神さま」(群馬県立館林美術館、群馬、2017)、「HAMAMATSU SESSIONS」(Hirano Art Gallery、浜松、2019)など。
発行元:アートビートパブリッシャーズ supported by FUJIXEROX
発行日:2020年11月発売
サイズ:318×236mm
ページ数:88
価 格:3,500円+税